
賃貸マンションを初めて知る方へ
「顧客がいなければなりたたない」ビジネスであり、「不動産は顧客が来なければただの箱」にしかすぎなくなってしまうのである。
つまり、このような特殊な不動産においてはサービス業、とりわけ観光関係は移り気な人間が売上げや利益を左右してしまう業種なのである。
口コミや口伝で繁盛する施設、テレビや雑誌などによる宣伝を必要とするもの、固定客をもって採算を維持できる規模に抑えている等、ソフト面の諸条件がからみ合って十分条件が構成されていく。
そのための企業努力も当然に必要であり、サービス内容の向上や品揃えなどで顧客の吸引力を高めることが不可欠となる。
結局、評価にあたっては、キャッシュフローの構成要素を詳細に吟味することが求められる。
たとえば、ホテルであれば宿泊と宴会の比重、ショッピングセンターであれば賃貸条件とテナントの信用力(格付けなど)、ゴルフ場であればプレー費と飲食費の比率、等々の吟味が重要である。
一般的なオフィスビルや賃貸マンションなどから得られる将来キャッシュフローの予測とはその質を異にするのは明らかだ。
ただ、最終的に、これらの予測されたキャッシュフローをどう判断するかは、投資家や担保評価を必要とする債権者にかかっている。
情報が提供されれば、あとはリスクをとるサイドが判断することであると言えよう。
ところで、不動産を投資の対象として検討する場合、ファンドマネジャーの多くは個別の土地および建物の価格については関心がなく、一体としての不動産から生ずる賃料などのキャッシュフローに注目している。
より高い収益物件を求めようとする場合は、初期投資額をいかに抑えるかが、利回り上昇を約束する常套手段である。
もちろん更地から得られる収益には限界があり、不動産として価値を高めるためには建物は必需品となる。
不動産ファンドなどにおいて、更地や開発型が敬遠され、すでに稼働している物件が好まれるのはこのような理由にもよる。
日本ではこれまで「土地神話」の信仰者が多かった。
そのため、建物は消耗品扱いであった。
前述したように住宅の平均寿命平均は26年であり、ビルなどの堅固な建物でも減価償却期間を超えて利用し続けるケースは稀ともいえる。
スクラップ&ビルドが一般的であり、そもそも建物自体、時代の流れに対応できるような作りにはなっていないことが少なくない。
おまけに賃貸物件では標準仕様が前提となっているため、原状回復工事を何度も繰り返す。
テナントの負担は重く、しかもテナント用に仕様を変えることは新たな負担を生む。
これを繰り返してきたわけである。
しかも、建物の競争力がなくなると、無惨にも稼働率は一気に下がる。
ここで気をつけなければならないのが、減価償却の扱いである。
キャッシュフロー上は現金として見込めるが、賃料などが急速に減ってくると収支がマイナスとなり、損益上の繰延効果を十分に活用できない可能性が出てくる。
減価償却のメリットは収支の黒字があってのことであり、赤字の場合はそれをあてにした計画が狂ってしまう。
また、不動産が頻繁に売買される対象となれば、土地と建物を別個の収益物件と考えること自体にも混乱が生じる。
結局、キャッシュフローの集合体として、1つの利益を生む商品として考えれば、その収益予想は容易になる。
この裏返しであるが、投資家や評価依頼者などに説明する際に、キャッシュフローを重視した評価、つまり、一体の不動産として評価した方が理解を得やすい。
キャッシュフローを重視することで、さまざまなリスクをヘッジする。
これが投資家に対する説明にもなるわけで、「単純明快をもって正解」とすることは評価の透明』性を増すことにもなる。
ただ、後述する「還元利回り」やキャッシュフローの内容、キャップレートの設定とその手法などについては、今後の議論やデータなどのインフラ整備が不可欠と言える。
保守的な考え方だけではグローバルスタンダードにおける投資家に対して、説明ができなくなる。
日本の独特な解釈をもって、新しい考え方を否定し続けるという逃げ道も、もはや限界に来ているのではないだろうか。
それでは、まず企業会計分野において、不動産の時価評価がどのように要請されているかを見てみよう。
現時点での、最大の関心事は日本の企業会計基準を国際会計基準に適合させることにある。
この国際会計基準の中で不動産の評価がどのように扱われているのであろうか。
日本の「会計ビッグバン」は事業法人などに大きな変化を迫っているのは事実だ。
しかも、証券監督者国際機構(IOSCO)は国際会計基準委員会(IASC)に対して40項目の改善を提示しているが、日本の会計基準ではそのうちの7項目にしか手がつけられていない。
この7項目の中で、最も重い課題が不動産の時価会計であると言われている。
販売用不動産の強制評価減と固定資産の減損処理は、「含み損」を多く抱える企業にとって企業の存続を左右するほど大きな経営課題になりつつある。
しかも、バブル崩壊後の地価下落が続くこの時期での話であり、タイミング的にも非常に厳しいのは事実だ。
売却するにしても実損が発生し、予定よりも損失が増加する可能性もある。
どちらにしても、簿価下げには償却体力の裏付けが不可欠だ。
不動産の保有が金融商品と同様に時価による変動リスクを伴うということは、所有すること自体が従来以上のリスクを伴うことを意味する。
地価が運良く急激な上昇を見せれば、これまでのツケを少しは相殺してくれるかもしれない。
しかし、不動産の価格は二極化しており、より高い収益が期待できるインカムゲイン型しか、価値上昇は見込めない。
この変動リスクを時価ベースで開示し、企業評価をより時価ベースで、行えるようにし、かつ現在価値を分かりやすくするために、日本の会計基準は新たな課題を突きつけられているのが現状だ。
まず、国際会計基準(IAS)であるが、これは国際会計基準委員会(IASC)が昭和45年ごろから策定してきた会計基準である。
このIASCは、各国の公認会計士の団体が任意に参加した民間組織で、日本の公認会計士協会もIASCのメンバーとなっている。
当初、この任意加盟の団体である、IASCが策定したIASは法的な強制力などを持ち得てはいなかった。
しかし、1993年7月に各国の証券監督者の集まりである証券監督者国際機構(IOSCO)は、コアスタンダートと呼ばれる基準を提示し、コアスタンダードをIASが満たすものであれば同機構が会計基準として認めることに決めた。
IOSCOのコア・スタンダーズ・リストは「一般」、「損益計算書」、「貸借対照表」、「キャッシュ・フロー計算書」および「その他基準」の計40項目で構成されている。
「一般」ではNo.1〜3、「損益計算書」ではNo.4〜16、「貸借対照表」ではNo.17〜29、「キャッシュ・フロー計算書」はNo.30、「その他基準」ではNo.31〜40となっている。
リストに掲載されていない項目としては「物価変動の影響を反映する情報(ISA15)」、「退職給付制度の会計と報告(ISA26)」、「銀行業及び類似する金融機関の財務諸表における開示(ISA30)」の3つが挙げられている。
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